炭道具として使われる香合は、国内外含めかなりの種類と数があります。
古来中国の堆朱(ついしゅ)、堆黒(ついこく)に始まり、室町・東山時代に日本に到来しています。日本の香合も古くは鎌倉時代より作られ、錫椽(すずたるき)、鎌倉彫、根来等が代表的な物です。
堆朱は宗・元の時代に始まりますが、現在残っている物はほとんど明時代のものです。中でも張成、楊茂、周明は堆朱三作と呼ばれ、畳附(底面)に針彫で在銘をみるものがありますが、この在銘も彫り方があまり深く彫られておらず、線が細く浮かび出ている物の方が確かなようです。何百回も塗りを重ね、その上に文様を彫出した物で、持った感じ非常に重厚感があります。
堆朱の香合は赤漆が中心ですが、数少ない物の緑や黄色が入っている香合もあります。例えば牡丹文や椿文のもので、花が朱、葉が緑で紅花緑葉と言って、喜ばれます。更にその上にところどころ黄漆が見られる物がありますが、更に珍品上手な香合です。
堆黒は堆朱の一種ですが、よく注意深く拝見すると、底に朱が見えたりする物があります。中でも地肌がはっきりと朱が見え彫文様のところが黒い物を堆黒地紅と呼びよりよろこばれます。又、朱が見えず、非常に光沢のよい黒色を発する物を特に堆鳥と呼びます。
香合は、茶人の間では香箱とも呼ばれ、炭道具の中で特に重要視されています。
さて、日本でも同じくらい古い香合に錫椽香合があります。最も古い物は数は少ないですが鎌倉時代に始まっています。元々化粧道具として作られた物で、蓋と身に蒔絵がほどこされ、合口が錫になっています。形は、正方形、長角、丸形と三種あり、蒔絵は梨子地に平蒔絵やだんだんと時代が進むにつれ、研出(とぎだし)、低い高蒔絵等なき絵技法も大事なみどころがあります。他に、堆朱の技術を取り入れ、鎌倉時代の禅寺で造られたと言われる鎌倉彫や紀州根来寺において造られた根来塗が古くからつたわっています。このように、中国の堆朱堆黒日本の漆器、蒔絵香合は、桃山時代を境に流行する焼物香合より古い時代に使われています。特に東山時代の頃より沈香木の貴重さ、又それを入れる沈箱更に小分けするための器として好まれた物と思われます。
時代も桃山、江戸、利休織部、遠州等大茶人の茶道が本格化してくると、焼物香合を外国(特に中国)へ注文したり日本でも好みのものが造られます。青磁、染付、呉州、祥瑞、中国南方の交趾やはるか紅毛(オランダ)まで発注されます。また、日本でも黄瀬戸、志野、織部、仁清、乾山等が造られます。このように、注文品、好み品含めこれらの香合を形物香合と呼びます。形物香合一覧表が江戸幕末頃作られ相撲番付のようになっていますが、右欄(東方)は第一段大関より交趾が並び、二段、三段に青磁、交趾の順に占められています。又左欄(西方)は染付、呉州中心になり他国焼が並んでいます。よく茶会でこれは形物でアガりもよく、結構ですという会話がありますが、それほど昔から茶人間で大切にしてきた物です。
交趾香合は、大亀、台牛、桃の順に出てきますが、見所は黄、緑(青)、紫、他白檀(金箔を張り付ける)釉薬があり、それぞれ一色のもの二色のもの三色のものに色分けられ鮮やかさは玉を見るが如くの発色が大切です。又、蓋裏、身裏では土や肌を見ることができますが、土はきめ細やかなやわらかい土、肌は卵の乳白のごとくすべすべした肌合いが肝要です。交趾はよく黄を第一とすると言いますが、それほど鮮明な色が大事と言う事です。口切りの小間の茶室の中では特に色鮮やかで愛着を感じます。
青磁は花入、茶碗、鉢等は時代古く南宋、元まで遡りますが、香合は全て明末に作られています。交趾同様格調高く、西方では一段目に桔梗、桃、一葉の三点のみがのっています。青磁香合は時代的に七官手ですが、砧(きぬた)、天龍寺に近いぐらいの色が理想的です。
土は、赤土がみやすくだいじなところです。染付は代表格辻堂や、哥仝鳥(叭々鳥)荘子他多数ありますが、茶人好みの古染付でやわらかな藍の発色と虫喰い(くすりめくれ)や、土は白地で全体充分な堅さが良いです。
祥瑞は、江戸初期遠州注文と言われます。染付よりも藍が深く絵文様も繊細になります。蜜柑が西方二段目にみえます。祥瑞香合の中では第一ですが、五郎大夫、呉祥瑞造の在銘を見逃せません。祥瑞は虫喰いは無く、土はゴマ土が約束です。又、遠州はオランダまで注文したと言われ、現存の白雁香合は数点のみです。広間の取合わせには洒落たうってつけのものです。又、反り物の刑物香合は中国でのおめでたい形文字日本人好みの形等多く見られます。
次に、国焼も桃山時代よりつくられています。黄瀬戸根太(きぜとねぶと)、伊賀伽藍(がらん)、志野宝珠、織部菊カブト、青分銅が番付に入っています。黄瀬戸はやわらかなあぶらあげ肌に全体薄黄がかかり、その中にタンパン、コゲ等上品さが大事な所です。根太は先がとがり丁度三角形のような形で、又、先が丸みを帯びた宝珠の形もあります。志野は辻堂、一文字、茄子等ありますがどれも光沢の良い柚肌に火色や鉄絵がみどころです。織部は、ご承知のように古田織部好みで、他ハジキ形が著名ですが、白地の中に青うわ具売りの光沢のよさを見逃せません。また、茶碗と色がわりが反対で、香合は大半青織部が多いようですが、黒織部香合は非常に少ないようです。
又、遠州の後、京焼の名工、仁清の白雁、乾山の檜梅等の形合香合も加えられています。焼物香合は形物の番付の格は大事なことですが、キスケのなさ、アガリのよさ等その条件を満たした物がより大事です。
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